悲惨人
古満目
ある冬の寒い日の出来事です。
僕達若手2人は大○さんというベテラン(おじさん、会社の上司です)の方と古満目に釣行しました。
行きの道中から「おまえらー魚よう釣るんかー?」などとプレッシャーをかけられていました。
釣りを開始してふとおじさんの方を見ると、彼の道糸が異常にカール(まるでバネを引き伸ばしたかんじ)しながら海中に消えて行っています。「ス、スゴイ道糸だ!」と僕達はひそかに話していました。
磯に上がって3時間が経過した頃です。僕達が上がった磯には大きな水溜り(深さ約50cm)があったのですが。「オワッ!!」と言う声に振り返ると、おじさんが水溜りの中に腰まで漬かっていました。おかしくてたまりませんでしたが笑うとものすごく怒るので、なんとか我慢し釣りを続けました。その30分後の事です。おじさんは「もー、ムカツク!弁当でも食うか……」と言いながら弁当の蓋を取り、それを片手に持ち、どこか足場のいい所をさがしているようでした。「アー!!」という悲鳴にも似た声に再び振り返ると、丁度おじさんが足をすべらせこけていく真っ最中でした。手に持っていた弁当はおじさんの手から吹き飛び、その行方を目で追っていくとみんながゴミ入れにしていたビニール袋にすっぽりと裏返しに入りました。おじさんはというと、また先程の水溜りに腰まで漬かっています。死にそうなくらいおかしかったのですが笑うとものすごく怒るので死ぬ気で我慢しました。
ぼくたち二人はその後弁当を食べたのですが、おじさんは何も口にしていません。バックの中を捜してみるとおにぎりがあったので渡すとうれしそうに食べていました。
陸に上がりこの出来事をちがう磯に上がっていた先輩達に話すと本人を目の前に大笑い。
おじさんは一目散に港を後にしました。